Interview

社会人

トライアスリート

安藤紀幸の邂逅

Entry.04

安藤 紀幸

Noriyuki Ando

邂逅ー思いがけず出会うこと、偶然出会うこと、巡り会いなど


安藤紀幸の邂逅を遡ろう。
始まりは、たった1人だった。
点と点が繋がって線になって、
また他の誰かと繋がって、
遠い誰かと繋がって、

また……

いつの間にか蜘蛛の巣のように張り巡らされた邂逅の連続に絡まりついたものがある。
それが安藤紀幸がトライアスロンを通じて掴み取ったものだった。

始まりの出会い

たった1人との出会いから全てが始まる。
学習院大学に入学して、トライアスロン部に入部する。
高校時代に体育祭で「鉄の男」なんて競技で3連覇していたけれど、トライアスロンでの知り合いはいなかった。
50m泳いで、うさぎ跳びをして、ハードルを超えて、麻袋を使って両足飛びをして、砂袋を担いで走って、跳び箱を飛んで、タイヤを引いてグランドを一周して、グランドを一周半走る。「鉄の男」はそんな競技だ。


安藤は、本当の「アイアンマン」になるためにトライアスロンを始めるが、大学のトライアスロン部は、決して強いチームではなかった。もちろん先輩もいるが、チームの自由な雰囲気は必ずしもトライアスロンに熱中している人だけではなかった。
唯一の同期「コバシ」と2人だけで練習することもあった。先輩を含めても3人だけのときもあった。大学の外プールは木々に囲まれて、木漏れ日が水面にキラキラと反射する。だけど、トライアスロン部しか使わないような日には、プールの大部分がビニールシートに覆われているままで、木漏れ日は反射しなかった。

春、出会いの季節

新たに2名の部員が加わった。
先輩の経験を聞きながら、みんなで新しいものを作り上げていく。
トライアスロン部が形になっていく。競泳出身の安藤が、中心になってメニューを作り課題に取り掛かっていく。それがインカレという全国大会の舞台だった。


安藤は新たな邂逅を求めた。
チームを強くするために、
自分を強くするために。
学習院大学の強みは、早朝にプールが使えることだ。そして、競泳仕込みのメニューを組める自分もいる。他大学の同じ実力のライバルやもっとレベルの高い選手を練習に誘った。すると、これまでとは信じられないくらいのスピードで蜘蛛の糸が広がっていく。

ただ単にレースの勝ち負けだけを考えれば、他大学の選手を鍛えてもしょうがないのかもしれない。だけど、そうは思わない。この出会いが、巡り合いが、邂逅が、何かを生んでくれるはずだからと信じて疑わなかった。

人数が増えたプールには、いつでも木漏れ日が刺すようになっていた。キラキラと輝いている。


また春がきて、出会いの季節。
その年に部員は倍増する。
あんなに広かった部室は、手狭でゆっくりくつろげない。そんな悲鳴が嬉しかった。