Interview

誰かのためじゃない

私のために

マネージャーをするの

Entry.26

菅井 実果

Mika Sugai

感情が同時に襲ってくる

レース中は、色んな感情がいっぺんに襲ってきて、どんな顔をしていたらいいのか分からず表情は置いてきぼりだ。たとえば、全国予選の関カレ。全国へのボーダーラインが、嬉しい結果と悔しい結果の分かれ目だったらこんなことにはならない。そうじゃないから、気持ちが追いつかない。
選手には、それぞれの目標がある。優勝したい。入賞したい。チーム内での上位。ライバルに勝ちたい。インカレに行きたい。完走したい。
目標を達成できた選手、できなかった選手が次々にゴールに倒れ込んでくる。野球やサッカーのように、チームの勝敗が分かりやすかったら、みんなで同じ気持ちでいられるのかな、と思うこともある。



上位でフィニッシュして喜んでいる。
実力を発揮できずに下を向いている。
ライバルに勝って浮き足立っている。
意外なアイツに負けて驚いている。
全国への切符を掴んで昂ぶっている。
全国への道を閉ざされて泣いている。
初めてのレースに衝撃を受けている。

色んな気持ちが、ドドドドっとなだれ込んできて私の頭の中を襲う。
ずっと練習を見てきたから知っている。どれくらいの思いを持っていたのか知っている。
スイム練習で選んでいるコース一つに気持ちは現れている。何度も押したタイマーに思いが溢れている。ずっと、見てきたから書いてきたから知っている。
この日ばっかりは何人分もの気持ちが襲ってくるから、処理しきることができない。頭がいっぱいになる。
全員が、思い通りの結果になればいい、そう信じて、そう願って送り出しているけれど、そうならないことも知っている。同じチームに、負けられない相手がいたら、必ずどちらかは負けてしまうでしょう。それだけじゃないけれど、どうしようもないことがあるって知っている。難しいよね、やっぱり。
でも、だからかな、と思う。
自分がやっていないトライアスロンであんなにも感動できるのは。
みんなの感情を受け取りながら、整理することもできないままにグルグルとかき混ぜていく。
そこに出来上がったものだけは、私しか、マネージャーしか知らないもの。教えたくたって、伝えられないもの。こんな気持ちにしてくれて、こんな世界に連れてきてくれて、いつもありがとう。そう思えるから、マネージャーを続けている。

誰かのためであるけれど、結局は自分のため。
誰かがいないと知ることのできないものを手に入れたいから。