Interview

斉藤宗樹
トライアスリートが集う
樹の下で

Entry.02

斉藤 宗樹

Muneki Saito

子どものときに、カブトムシやクワガタを育てた経験はないだろうか。
カッコいい虫たちを競い合わせて眺めているのは、スポーツを観戦していることに似ている気がする。
戦っているカッコいい虫たちは、24時間戦い続けることができるわけではない。自分の寝床で休んで、
甘い樹液の出る樹で栄養を補給する。
今回、取材した斎藤宗樹さんはそんな大きな樹のような人だった。

エース栗原正明さんに連れられて

そもそも斎藤宗樹さんとその日にインタビューをする予定はなかった。
神奈川県某所でプロアスリートの栗原正明選手へのインタビューを行っていた日のことだ。インタビューを終えると、当初の予定通りこれから向かう場所があるという栗原選手。そのまま僕もついていくことになった。

栗原選手が競技者のカブトムシであるなら、まさに向かう先は樹液がたくさん出る特別な場所だった。辿り着いたのは、歯科技工士として働き大学生のお子さんもいるという斎藤宗樹さん宅。静かな街並みに、きっちりと根を張り巡らせるような一軒家だった。そもそも栗原選手はここに何をしに来たのだろうか、よく分からないうちに、その日、2人目のインタビューをさせてもらった。

トライアスロン経験は?

初めてのトライアスロンは、なんと50歳になる年でのことだった。それまでは、自転車だけを楽しんでいたが、栗原選手と出会いデュアスロンを始め、あれよあれよとトライアスロンに出場したのだという。
トライアスロンを始めた人が、冬場にデュアスロンをするというのはよく聞く話だが、自転車、デュアスロン、トライアスロンと階段を上って行く人もいるのだと知ることになる。階段を一つ登るときにはトライアスロンに出るとは思っていなかったそうだ。

初レースは千葉県の木更津トライアスロンのスプリントの部。トライアスロンの魅力は速さを求めるところではないと、振り返る。そのときには年代別で6位入賞を果たし、それが嬉しかったというのもあるが、エリートの選手たちとは全く違う次元でトライアスロンを楽しんでいたそうだ。

同年の村上大会ではオリンピックディスタンスに挑戦。特にバイクコースでの、応援には感動したという。エリートの速い選手では感じられない魅力がたくさん詰まったレースを経験したそうだ。

なぜか人が集まる樹

インタビューを続けていると、いくつか気になる名前が挙げられた。九町さん、柳井さん、山崎晋平さん。過去にエリート選手として活躍していたトライアスリートの名前だ。この樹に集まるのは、一人の競技者だけではなかったのだ。

斎藤宗樹さんのトライアスロン初挑戦は2015年。それもエリート競技者としてではなく、一人のトライアスロンを楽しむ者として。それにも関わらずどうしてなのか、エリート選手が集まっている。もしかしたら、エリート選手が集まっている表現は誤りで、どんな人でも寄せ付けてしまう魅力があるのかもしれない。カブトムシのような力強い存在もあれば、蝶々のようにか弱い存在も惹きつける。