Interview

限界を尋ねて
新田城二の挑戦

Entry.24

新田 城二

Joji Nitta

目標はオリンピック

やるからには頂点を目指したい。新田城二は、トライアスロンでオリンピックに出場することを目標に掲げた。
ジュニア出身の選手や、大学から始める選手が多い中で、トライアスロン転向を決意したのは大学四年のことだった。競泳選手として、全てを出し切ってから、新たな一歩を踏み出した。
競泳生活最後の年、400個人メドレーにて、ジャパンオープン29位(4分27秒89)、日本選手権31位(4分29秒11)の記録を残した。
鹿屋体育大学大学院に進んだのは、競技生活の延長という意味合いが大きなものであった。今度は競泳ではなくて、トライアスロン。その中で、自分の中に眠る可能性を探し出した。
スポーツ選手は、人柄も魅力の一つであるが、やはり根本は結果で語ってこそである。
結果が出たら、その度に語りかけてみよう。

2016年3月27日

大学院進学直前に出走したのは宮崎県認定記録会だ。
バイク競技はないが、トライアスロンへの扉を叩いた日だった。会場のプールは、競泳時代であれば練習で使うような場所。計測も手動で、だからこそ妙に気負うようなことはなかった。いつも通りリラックスして挑戦する。
スイム400m 4分11秒43
ラン5000m 18分29秒60
「そのタイムはあなたの限界ですか?」
答えは即答でノーである。
練習方法は大きく変わった。競泳時代の練習内容にバイクとランの練習を足せばいいわけではない。身体は一つなのだからそのバランスは見直す必要がある。その結果がこれである。オリンピックを目指そう、とはその時に明確に宣言するようなタイムではなかったが、延長戦の始まりであった。

2016年7月24日

初めてトライアスロンのレースに出場した。長崎西海トライアスロンはエリートレースではなくて、一般向けのレース。
記録は2時間38分51秒。
初めてのレースに苦戦した。
「そのタイムはあなたの限界ですか?」
またしても答えはノーである。

新田は競泳との選手層の違いに驚いた。会場の雰囲気が違っている。そもそも競泳にエイジグループのような選手は存在しない。マスターズはあっても、イコールではない。
得意なスイムは先発スタートをした選手を追い抜く形になった。自分だけのコースを泳いでいた時にはない感覚。近い、せまい、ぶつかる。
バイクでは、自分よりもずっと年齢が上の選手がビュンビュンと抜かしてくる。自分の未熟さが明確になる。初めてのトライアスロンランは身体が重く思うように動かない。そう簡単なものではない。それがデビューだった。

2017年4月30日

一年越しに認定記録会に出場した。会場は東京。
競泳時代のライバル高村健。その双子のトライアスリート高村亮も出場することに縁を感じる。一年間でスイムの維持をしながらランを強化する。
スイム400m 4分12秒11
ラン5000m 16分59秒49
「そのタイムはあなたの限界ですか?」
今のところも、問題なくノーである。


スイムのタイムこそ維持であるが、ランの持ちタイムを伸ばすことに感触があった。
この記録を持って、トライアスロンの学生選手権に出場するための予選大会免除の権利を獲得する。学生生活の延長戦にふさわしい結果である。大学院2年生になって、初めて挑戦する全国大会。九州では戦うことのできなかった選手の中で、どのような結果を残せるだろうか。