Interview

好きだから、
それだけ

Entry.25

原 昇平

Shohei Hara

東京工業大学 原昇平

アスリートであり続けることに重大な決意は必要なのだろうか。その答えは実に曖昧で、その人それぞれと言わざるを得ない。もちろん、「競技ひとつの結果だけで生活をする者」としてのアスリートであれば、覚悟と実力が伴わなければいけないことが容易に想像することはできる。しかし、大袈裟な決意をすることもなく、ただそれが好きでいるから続けるアスリートも存在する。東京工業大学原昇平は、そんなトライアスリートである。

原昇平は、走ることの魅力に取り憑かれた。ただ走るだけ。そう難しいことではない。多くの人が、走ることができる。原が長けていたのは、楽しいと思うこと、そこに行き当たった。

走るってなんだろう

走るとはなんだろうか。
前を見て走る。背中を追って走る。
逃げるように走る。夢に向かって走る。
タイムを意識して走る。順位を意識して走る。
最後まで振り絞って走る。長い距離をのんびりと走る。
そのどれもが走ることで、そのどれもが楽しいことだった。

原は中学生の県大会で8位に入賞した。3000mを9分09秒。入賞者の中で唯一、全国への標準記録を突破できなかった。表彰式で、全国大会への思いを馳せる選手の中に一人だけ残されたのは、それなりに思うところはある。だけど、走ることへの向き合いを変える理由にはならなかった。
苦しいというか、嫌な気持ちになったことは一度もない。だって走ることは楽しいのだから。

高校での陸上競技生活は、さして大きな記録を残せたわけではない。良いレースも悪いレースも全ての結果に納得して、やはり走ることは好きなままだった。走ることは清々しい。

トライアスロンで走る

東京工業大学に入学する頃にはトライアスロンをやるとほとんど決めていた。もちろん、そこが強豪校だから、ではない。トライアスロン部があることなんて入学してから知ったくらいだ。トライアスロンを始めたのは新しい走りと出会いたかったから。

初めてのレースは関東インカレで、スイムもバイクもそこそこにこなす。そして、新しい走りと出会った。
泳いでから、漕いでから、走る。走るまでのその時間は、別にレースに勝つための過程ではなくて、走ることを最大限に楽しむための下ごしらえだ。この二つをこなした後に走ることは、今までに味わったことのないものだった。
走る。走る。走る。
トラックレースともロードレースとも違う。違うけど、この走りも楽しい。そう思ったら、あっという間にレースを終えていた。初めてのレースでランラップは4位。好きなことで結果が出るのは嬉しかった。三年生の関東インカレでは、ランラップ1位。こんな楽しい走りはない。