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ムコーダマガジン

No.8

同じレースは一つもない



【 同じレースは一つもない 】


トライアスロンの距離設定に、さまざまな規格があることはここで改めて述べるつもりはない。

誰かとしのぎを削る競技としてのトライアスロンにおいては厳密に設定すべきものであることは間違いないが、
全てのレースを無理やり一つの距離に落とし込む必要まではないのではないか、と思うことがある。

トライアスロンを楽しむ上で、一番大切にしていることは、その時その状況で、最大限に楽しめる方法を取るということ。

雨の日も風の日も晴れの日も、全部受け入れたい。

その中で距離設定は特に気になっていて、無理に規定の距離に合わせなくても魅力的なレースは存在していると思う。

たとえば、日本トライアスロンの発祥とされる全日本トライアスロン皆生大会の距離設定はスイム3km・バイク140km・ラン42.195kmだ。

石川県のトライアスロン珠洲大会はスイム2.5km・バイク102.2km・ラン23.3kmだ。

アイアンマンディスタンスというような画一されたものと一致しているとは言えない。

決まった距離でなければトライアスロンと呼べない、なんてことはなく、どれも間違いなくトライアスロンの大会である。
また、天候や道路の状況などで距離が変更されたとしてもまたトライアスロンである。



横浜トライアスロンの写真
私がトライアスロンを始めた時には既に、シーズンに入ると毎週のようにどこかでレースが行われていた。

この時期に近場でレースがないかな、と探してみるとおよそ要望に叶ったレースが存在している。
ここでレースがあったらいいなという需要に応じてくれる土壌は出来上がっていた。

そうやって、全国でレースが行われるようになると悪天候に見舞われてしまうことも少なくない。毎年どこかの大会が影響を受けている。
トライアスロンは屋外スポーツであり、海や湖などの自然を利用するため止むを得ず中止にしたり距離を短縮してしまうのは避けることができない。

暑さを原因にランの距離を短縮したレースを経験したこともある。赤潮が発生してスイムが中止になったこともある。
それは一般のレースだけではなく、ワールドカップレベルのレースであっても起こり得ることで、国際的な大会がトライアスロンからデュアスロンに変更されたという過去もある。



私自身、レースの距離変更を残念に思ったこともあるが終わってしばらく経ってみれば、そういうことがあっても仕方ないよなと思い直した。
強行して事故が起きるなんて馬鹿らしいことはない。

トライアスロンが環境依存型のスポーツであるからには当然受け入れるべきことであるし、むしろそれを楽しむべきなのだろうと今では考えている。
あの年は大変だった、と回想して笑いあえるくらいがちょうどいい。

野球場が画一な広さではないように、トライアスロンもその土地の地形、その日の天候などによって形を変えるからこそ、そこだけにしかない魅力が生まれるのだろう。

違う会場に行ったら、同じレースにはならない。

同じ会場だとしても、同じレースにはならない。はっきりと断言しても悔いはない。

選手の数だけ物語があるように、大会の数だけ物語がある。それが掛け合わさって、数えきれないほどの感動が生み出される。

そう思っているから、その時にできるレースを楽しめばいいのだと思う。楽しみ方は人それぞれだ。

日本選手権の写真


ムコーダ