Interview

切磋琢磨

杉原賞紀は
信じる夢を見る

Entry.16

杉原 賞紀

Takanori Sugihara

茨城県龍ケ崎市。
関東鉄道竜ヶ崎線に揺られて竜ヶ崎駅に降りる。地名の「りゅう」は様々な表記が混在するが、やはりその場所には伝説性を感じずにはいられない。そこにいる、「彼ら」は、何度も何度も滝を越えようとして、滝壺に叩き落される。まだ、登りきった先を見たことがない。「彼ら」はその先にある景色を見るために、愚直にその滝を登り続けるのである。

切磋琢磨 杉原賞紀は信じる

杉原賞紀は全てを預けた。自分の全てを預けた。それは、家で待つツマに家庭のことを全て任せるように、人生をかけた選択だ。それは一見すると、口約束のように淡いものだが、自分にとっては、信頼に裏付けされた解けることのない思いだ。
ドラゴンボールの神龍がどんな願いでも受け入れてくれるように田山監督に全てを委ねることができる。七つの球を集めると願いが叶うことを信じているから冒険することができた。大学生活を冒険することができた。まだ、冒険の途中だけど、信じているから、必ず叶うと疑わない。

11月に行われた強化記録会。かれこれ6回目で、失敗ばかりだった。日本人がW杯などの舞台で活躍するためには、ここで派遣基準を突破する必要がある。スイムとランの記録会は、トライアスロンとは異なる調整方法に試行錯誤を繰り返す。今年は宮崎でのW杯に出場し、準備期間が3週間しかなかった。そこから記録を突破するにはどうすればいいだろう。
田山監督との話し合いの中で、決まった方針はバイク練習に力を入れることだ。今、1番自信のある種目はバイクだとはっきり言える状態で記録会に挑む。
3種目の中で1番回復の早いバイクで心肺を鍛えるのが主眼だが、スイムとランの記録会に向けてそこまで思い切ることができるのは信じているからだ。この場所を、監督を、自分を信じているからこそバイクを練習した。
結論から、無事に派遣基準を突破する。間違いじゃなかったことに嬉しさを感じた。
血の繋がらない、本来であれば赤の他人であるはずのツマを一生をかけて信じるように、杉原賞紀は信じ続ける。

ナショナル合宿で初めて田山監督と練習をした時に、新しく流通経済大学でトライアスロン部を創ると誘われた。それは、絶対に入れというような勧誘ではなく、自分の意思で来たいならば来て欲しいというような言葉だった。自分の気持ちを確かめた。夢がある。実現したい夢がある。
気づくと、自分の信じる場所が明確になっていた。この竜が住む場所で、龍ヶ崎という場所で、世界に飛んでいきたい。これから後に続く後輩たちも、細かい動機は違っても、同じように信念を持っている。現在の部員や、まだ見ぬ後輩と切磋琢磨しながら、信じながら、戦う。もしかすると、その選択を失敗だったり誤りとする人もいるかもしれない。ジュニアでの成績と比較して、進んでいないと言う人がいるかもしれない。それでも、信じているものがあるから強くなれる。夢が叶う。


卒業して、就職しても、練習拠点はこの場所に置くつもりだ。杉原賞紀は龍ヶ崎に住む、2人目の竜になろうとしている。