Interview

no pain no gain

小林竜馬の気迫

Entry.12

小林 竜馬

Ryoma Kobayashi

茨城県龍ケ崎市。
関東鉄道竜ヶ崎線に揺られて竜ヶ崎駅に降りる。地名の「りゅう」は様々な表記が混在するが、やはりその場所には伝説性を感じずにはいられない。そこにいる、「彼ら」は、何度も何度も滝を越えようとして、滝壺に叩き落される。まだ、登りきった先を見たことがない。「彼ら」はその先にある景色を見るために、愚直にその滝を登り続けるのである。

no pain no gain 小林竜馬の気迫

2017年現在、流通経済大学トライアスロン競技部には6名の部員がいる。この年、初めて全学年に部員が揃ったことになる。2年生の小林竜馬は、滝を登り続ける。
竜の名を持つ小林は、まだ登りきったことはない。その前に何度も挑戦している人もいた。「杉原賞紀」「古山大」「岩本敏」、3人しかいない先輩は、3人とも既に高いところにいた。まだ、登りきっていないようだが、それでもかなり進んでいるようにも見える。高ければ、見える景色も広いだろう。そこにいくには、そこを超えるには、滝を登るにはどうしたらいい?
たった2人の後輩も有り余る力を、その滝にぶつけている。先輩に届かない悔しさも、後輩に負けてしまう悔しさも、どちらも大きくは変わらない。この滝を登りきれない悔しさも、だ。全員に勝ちたい。

東北高校に在学中、七ヶ浜で行われた日本スプリント選手権に出場した。地元の高校生ということで坊主頭の冴えない自分が記者会見に出席する。
そんな折に、面目躍如の英雄が声をかけてくれた。話しかけることも許されないような、まるで竜のような存在に固まってしまう。
しかし、在学中にはもう決まっていた。自分はこの人の元でトライアスロンをやろう。本気でやろう。流通経済大学で戦うんだ。

誰もが圧倒される竜の側に近づくと、要するにどれほど凄いのかと自分の物差しで測ることができない「田山寛豪」さんの元で練習を始めると、滝壺に叩き落されるような思いをした。竜が空を舞うように鮮やかな活躍は、ただ過ごしているそれだけで手に入れるものではない。練習で流した汗と涙、それがあるからこそ、辛い思いを繰り返したからこそ、パワーをためてあんなにも空高く飛ぶことができるのだ。
今、こうして練習ができる環境は、竜の汗と涙が伴う滝だ。まだ登りきれていないのだから、どれほどの道のりをたどって、どれほどの努力をしたのかはまだ分からない。
思い知るほどにわくわくする。自分もあんな風に飛んでみたい。この滝を登りきったら、もしかすると、感動の涙で景色なんて何も見えないかもしれないけれど。


no pain no gain
何かを得るためには、何かを受け止めなくてはならない。